中からは香ばしいコーヒーの香りがして、それに誘われるかのように台所に行くと
「あれ、莉愛ちゃん早起きだね。おはよう」
そこに居たのはスウェット姿の伊吹さん。
目は優しげに細められ、コーヒーを片手に飲んでいる。
「あ、おはようございます。あの…昨日からお邪魔してて…」
「うん、琉聖から聞いてる。ゆっくりしていってね」
「すみません…いきなり」
「気にしないで、佑衣や悠真もよく泊まりに来てるし」
「そうなんですか?」
「うん、佑衣なんか1週間毎日いる時あるよ。だから莉愛ちゃんも大歓迎」
こうして伊吹さんと二人きりで長く話すのは初めてかもしれない。
だけどイカツイ顔とは裏腹に、とても穏やかで優しい雰囲気がやけに私を落ち着かせてくれる。
なんか、大人って感じだな。
「それにしても、まだ五時半だよ?もう一度寝たら?」
「え?五時半?」
やけにスッと目が覚めたと思ったら…私あんまり寝てなかったんだ。琉聖と別れて部屋に行ったのが二時過ぎだったから、三時間ちょっとしか寝てない。



