シンっとした車内。
ラジオもBGMも流れていなくて、助手席に座った茶髪の人が電話している声だけが響く。
私の隣には白銀の男。
男は車のドアを開けた時も、今だって一瞬でさえこちらを見る事はなく…私はこの男の隣に何故か腰掛けている。
スルーという言葉は、まさにこんな時に使うのかもしれない…
私が車に乗ったのもスルー
私がここにいる事にもスルー
私はバレないようにと、横目で白銀の男を見つめるけれど…その視線は交わるどころかやはり合う事はない。
ただ少しだけ、その男の横顔につい見入ってしまったのは事実だった。
「着いたよ」
茶髪の男がこちらに振り返り、やっぱり先ほど見せた爽やかな笑みを私に送ると、そのまま車を降りて行く。
私もそれに着いて行くようにして後部座席のドアを開ければ、その降り立った先の光景を見て思わず唖然とした。



