「膝、擦りむいてる」
茶髪の男の人の瞳は弧を描くように細められ優しげに笑うと、大通りへとさっさと歩き出す。
言われた通り自分の膝を見ると、ショートパンツから出た膝小僧は見事に両足とも擦りむいていて血が出ている。
いつ擦りむいたのか…男の子を抱えた時にでも出来たのか、確かに傷が出来ていて
けど、だからといって付いて行っても平気なものなのか…?と思ったけれど、もう一度「おいで」と茶髪の男の人に優しく言われたものだから警戒するのをやめて立ち上がった。
さっきまでは全く気がついていなかった痛みも、意識してしまうとダメなのかズキズキと響く。
膝からはタラリと一滴の血がスネのあたりを通過して靴下へとシミを作った。
「この車に乗って」
言われるがまま付いて行った私は、大通り脇に止めてあった一代の黒塗りの車のまえでそう言われ…今さら断るわけにもいかずゆっくりと後部座席のドアを開く。



