そう思ったら何故だか少し気持ちが楽になったような気がして……



「ありがとう」



ドアを開けてくれた梓にそう目を向けて小さく微笑めば、梓も珍しく少しだけ口角を上げて笑う。



今はこれだけで十分なのかもしれない。




私が彼の側にいたいと願う理由は。



何も考えず、彼の側に…彼等の側にいられればそれで良い……


何も求めず、今まで通り…毎日を過ごせればそれでいい。



「ひなのさん、さようなら」



後ろへと振り返り、悠真と琉聖の近くにいたひなのさんへ軽く会釈をすると、何故だか驚いた顔をしていたひなのさんが慌てて大きく手を振った。




「またご飯食べにきてね!」




目尻を下げ笑顔を見せた彼女は、やっぱり悠真にそっくりで少しだけ安心感を持つ。



「はい、是非」



私が車へ乗ったのを確認した梓は、そのあと後部座席へと乗り込み勢い良く扉を閉めた。