だけど、そんな私を見て琉聖が少し優しげに笑うもんだから…本当は私を元気づける為にワザとそんな風に言ったのかもしれないと思った。



だって琉聖はいい奴だから。




見かけよりも態度よりもずっとずっと、いい奴だから。




「送る」



しばらくしてそんな声が夜道に響いてきて…



心地よい低音ボイスにまた、胸が高鳴る。
いくら押さえようときても収まる事はなくて…この気持ちは思い通りにいかないモノなのだと知る。




「行くぞ」




それは確かに私を視界に捉え、そして私へと放たれた言葉。




後ろではひなのさんの「ヤバ!これが噂の生梓様!!」なんて声が聞こえてくる辺り、梓とひなのさんの接点はないのかもしれない。



近くに止められていた車の後部座席のドアが梓によって開かれる。




「乗れよ」



ゆっくりと振り返り私にそう言った梓は私が乗るのを待っているのか、そのまま車外に立ちこちらを見すえていた。




シルバーナイトのメンバー達からしたら、梓に車のドアを開けてもらうなんて恐れ多い事なのかもしれない。



いや、それどころかこの街中の人達にとったら彼の隣にいる事自体が…奇跡のような事なのかも。


そう思うと、この梓達がいる世界の大きさを少し知った。




「莉愛ちゃん、また明日ね」



「明日の朝迎え行くからな」




そう言った悠真と琉聖の方へと振り返りながら、やっぱり私は明日行く事になったんだ。なんて人ごとのように思う。




でも逃げていても仕方ないとも思う…
こうして今日梓と会った時点で…結局私はこの人の側から離れられない。本当は自分自身どこかで離れようと思っていないのかもしれない。