「…じゃ、じゃあ私はお先に…」





小さな声で呟くと、カバンを脇に抱え込み、逃げるようにこの場から立ち去ろうとした。





しかし、恭哉君が私を見逃すはずもない。


肩をガシッと掴まれ、逃げられなくなってしまう。





なっ、なに?


私、早く帰りたいんだけど…。





そして…





「今日は恵那と帰る約束してるんだよね」





…えっ?


きょ、恭哉君…?





「帰るぞ恵那」





そう言って私の腕を掴むと、教室から連れ出した。





「…なによあれ」


「あの女、なんなのよ」





と、私たちのいなくなった教室では、そんな声が零れていた。