約束のパーティーの日がやってきた。華は、相変わらず叔母さんの家に預けられていて、朝から康と優香は準備に追われていた。
　
　着物の着付けができないため、スタイリストの友人を呼んでくれたとのことだった。

「大澤 智子(おおさわ ともこ)です。康と由紀の友人でもあります。よろしく」

　首筋まで切りそろえた黒のボブカットに、ノースリーブのタートルネックニットを着て、首元にはゴールドのティファニーのスマイルネックレスが光っている。

　野暮ったい優香とは違って、垢抜けた智子に気後れするのに時間はかからなかった。

「康にしては、珍しいタイプを選んだわね」

　優香に着付けをしながら、智子は呟くように言った。反応していいのかしてはいけないのか分からず、優香は黙り込んだ。

　肯定的なのか、否定的なのか判断しかねる言葉だった。

「ねえ、どうやって康と知り合ったの？」

　優香が黙っているのを感じたのか、智子は話題を変えた。

「仕事の都合で……」

　まさか、家の前に居座ったおかげで擬似恋人を演じていますと言えるはずもなく、口ごもりながら優香は答えた。

「ふーん。仕事の都合ね」

　意味深な言葉を残すと、智子は「じゃあ、さっさと着付けますか」と作業を再開した。