美智子が持ってきた差し入れの食事を、華も交えて一緒食事を取った。
華は随分と大人びていて、優香と康の疑似恋人のことを何も美智子に告げ口するようなことはなかった。
どうやら、康と華は親子ではないらしい。
深い事情は聞けなかったが、康の姉の娘が華とのことだ。
時折、美智子が食事を作って差し入れしているらしい。
「ここら辺は古い家ばかりでね。私たちの一族は元々農家だったから、今は地主なんて名乗っているけれど」
美智子は、家で食事を取ってきたばかりらしく食事をする優香に「おかわりは?」と尋ねながら、色々と自分たちについて話をしていく。
時刻が二十時をさした時、優香はそろそろお暇する旨を告げて、立ち上がった。
汚した食器を片付けようとすると、康が客なのだからしなくていいと制した。
赤の他人に勝手に台所に立たれたら、あまりいい気はしないかと優香も受け入れた。
「あら、優香さん帰るの?康ちゃん、送っていってあげなさいよ」
康が一瞬めんどくさそうな表情を浮かべているのが、見えた。
優香は、笑顔で「華ちゃんもいますし。一人で大丈夫です」と遠慮する。
「何を言ってるのよ。最近ここら辺物騒なの。華ちゃんの面倒は私が見ていますから、遠慮しないで。ほら、康ちゃん」
お腹がいっぱいになった華は、ソファーで眠ってしまったようだ。
「車出してくる」
洗い物を終えた康が、車の鍵を取りに立ち上がった。
「いえ、気にしないで大丈夫……です」
「彼女なんだから、遠慮はするな」
康が別室に消えたのを確認すると、美智子は嬉しそうな表情を浮かべて優香に耳打ちした。
「ツンデレなのよ、康ちゃんって」



