おかしいとは思っていた。

最初のお母さんの行動を思い出してみると
違和感しかない。

写真に写っているあの知らない男の人は?
私のお父さん?それとも全く別の人なのか。

お母さんが言うには、お父さんはまだ生きていると、
ほかの女を作って逃げたと言っていた。

もしそれが本当なら。
私の勘が外れていなければ。

___


「ねぇお母さん。」

「どうしたの美依。」


私は全てをお母さんに聞こうと思った。
全てを知りたかった。


「この写真のことなんだけど」


私はあの写真を差し出した。
お母さんの眼が揺らぎ出したのが見てとれた。


「これを、どこから…」


私は知らないふりをした。
もしかしたら違うかもしれないから。


「これって私のお父さん?」


お母さんは黙ったままだった。


「この隣の赤ちゃんは私?」


「美依」


「何。」


私は冷静だった。
お母さんの動揺さを見て確信した。

翔くんに、反応したこと。
写真の赤ちゃんのをよくよく思い出してみた。
今思えば全て繋がる。
よくよく見ればあの男の人も…。


「美依、落ち着いて聞いて」


「うん。」


お母さんは目に涙を溜めていた。



「これは、美依のお父さんよ。」

「本当?」

「ええ。間違いないわ。」


この男の人は私のお父さん。
初めて見た。
これが私のお父さんだと言われた瞬間、何故か力が緩んだ。
これが、私のお父さん。


「じゃあこの赤ちゃんは?」


写真の赤ちゃんを指さした。


「どう見ても私には見えない。これは誰なの?」


お母さんは1度大きく深呼吸をして話し出した。


「そうよね。美依も大きくなったんだもの。話してもいい頃だわ。」


お母さんはゆっくりと話し出した。


「これは、美依のお兄ちゃんよ。」



お兄ちゃん…これが…
やっぱりと思った。

でも私は続けた。



「なんでお兄ちゃんを隠す必要があったの?なんでお兄ちゃんは今ここにいないの?」



私は知らないふりをした。
本当は信じたくなかった。
信じたくもなかった。でも、

知らないといけない気がした。



「このお兄ちゃんはね、美依のお父さんと、私以外の別の女性との間の子供なの。」



私はゴクッと唾を飲んだ。



「分かるわよね。お父さんは浮気をしたの。その時の子供よ」


私は全てが繋がった気がした。

やっぱりそうだったのか。そうとしか思えなかった。
何故もっと早く教えてくれなかったのか。
疑問にしか思わなかった。


「お兄ちゃんと会いたい。」



私は口走っていた。

足がガタガタと揺れ、
声も震えていたのがわかった。



「え?」



会いたいと言っても、実は心の準備ができていなかった。

もし私の兄に会ったとして、私はどうするのか。
私はどう過ごしていくのか。
私は、真実だけを求めすぎていた。


「分かったわ。今度会いましょう」