哀しき野良犬

城山組の事務所の前に辿り着くと、電柱の陰でウロついている晴男の姿があった。
警察官がこの晴男の姿を見たら、間違いなく職務質問をするだろう。
それほど不審だ。

「お兄さん。何してんだよ?」

「修平くん!」

慌ててポケットから手を出すと、道路に包丁が落ちた。

「そんなもん持って、何する気だよ」

「君には関係ない」

「バカなことすんなよ。これ以上幸恵さんを悲しませるな」

「今のままのほうが、よほど地獄だよ」

「じゃあ、お兄さんが組長を殺せば、幸恵さんは幸せになんのか? そんなわけねえだろ。家族にまた人殺しが増えるだけじゃねえか。そんなことして幸恵さんが喜ぶわけねえじゃねえか!」

「ヤクザに幸恵をオモチャにされるよりはマシだ!」

「だったら、今すぐ借金を全額返済できるのか?」

事務所の中からヤクザが出て来た。