哀しき野良犬

「私、お兄ちゃんと2人で笑って暮らせるなら、今の生活が辛いとは思っちゃいないもん。どんな仕事だって、仕事だと割り切っちゃえば平気だもん」

「だけど晴男さんにしてみれば」

「お兄ちゃんを失いたくない! お兄ちゃんがおとなしくしてたら何も起こらないの。お
兄ちゃんは包丁を持って事務所に向かったの。組長を殺すと言って、1人で行っちゃったの」

「はあ?」

てっきり俺は晴男が拉致されたと思った。

「そんなもんムチャクチャじゃねえか。殺されちまうぞ」

「だから、どうしよう?」

晴男が事務所に乗り込む前に捕まえるしかない。
乗り込んだら最後、袋叩きだ。

俺たちは城山組の事務所へ向かった。
俺が暴走族時代、上納金を納めていた城山組の事務所は、俺たちがいつも群がっていた繁華街の中にあった。
幸恵が先日訪れたビルからは目と鼻の先だ。