哀しき野良犬

アパートに着くと、俺の部屋の前に人影がしゃがみ込んでいた。

嫌がらせか、
とも思ったが、よく見ると幸恵だった。
しかもあの明るい幸恵がかなり落ち込んでいる。

「どうした?」

俺が声を掛けると、幸恵は一気に泣き出した。

「どうしたんだよ?」

「お兄ちゃんがっ・・・・お兄ちゃんが!」

「晴男さんがどうした?」

乗り込んだ、とか、殺すとか殺されるとか、興奮してワケが分からない。
落ち着かせるのに手間取った。

つまりこういうことだ。
幸恵の売春が晴男に知られ、晴男は幸恵を自由にしてくれとヤクザの事務所に乗り込んで行ったということらしい。