哀しき野良犬

「殺したのはオマエの兄貴だと分かっているのに、なのにオマエの顔見てるとムカつくん
だ。自分でもどうにも抑えられねんだよ。だからオマエに工場を辞めろと忠告したんだ。
社長は事件に関して一切何も言わねえ。俺の独断で、オマエに辞めて欲しかったんだよ」

「だったら、なんで、今日、迎えに来たんですか?」

「言ったろ! 俺はオマエが好きなんだよ。だけどムカつくんだよ。この矛盾にメチャク
チャ腹が立つんだよ」

「スミマセン・・・・・」

「社長はたぶん、オマエの退職を引き留めるだろうな」

「でも俺は辞めます。安心してください」

アパートの前で車を降りた。
二度ほど「ありがとうございました」 と頭を下げ、先輩の車を見送った。

兄は長坂先輩の彼女も殺していた。
正直言って相当ショックだった。