哀しき野良犬

随分と年上だと思っていた彼女はまだ20歳だった。
晴男は幸恵の売春を知らない。
知られたくないんだ、と幸恵は寂しそうに呟いた。
兄貴には本当に感謝しているからと。

そんな幸恵の姿を見ていたら、俺は凹んでいる場合ではないと思った。

幸恵と別れてから、俺はまたコンビニエンスストアに立ち寄った。
昨夜購入した苺大福もカップラーメンもどこかに紛失してしまったからだ。
同じものを買い、レジに並んだ。

「あれ~? 一条修平じゃん?」

俺の背後に暴走族時代の仇、というか、会えば喧嘩ばかりしていた男がいた。
奴は片桐といって、中学時代の同級生だ。

「族を脱けたかと思ったら殺人犯になっちまうんだもんな。驚いたぜ」

「誰が殺人犯だよ」

「5人も殺したんだっけ? しかも強姦殺人。怖ぇ」