哀しき野良犬

幸恵は俺を近くのカフェに誘った。
2人ともホットコーヒーを注文し、カップを手にして席に着くと、なぜ俺が此処にいるのか尋問された。
俺は自転車を取りにあの場にいたことと、幸恵が男と歩いて行くのを見かけたことを喋った。

「もしかして私のこと、心配してくれたとか?」

その通りだ。
一宿一飯の恩義という以前に、幸恵のことが気になったから尾行した。

「優しくしないで。どうせ離れて行くんだから」

「借金でもあんのか?」

「君は何なの? 家族なんていないほうがいいって言ってたでしょ?」

「気に障ったらゴメン。俺の親父はギャンブル狂いでさ。2年前から行方不明だし、お袋
は自殺しちゃうし。なんか、家族って面倒だなって」

「そっか。うちの親父と同じだ」