哀しき野良犬

「誰がラクしてるのよ! 誰が好き好んでこんな仕事を選ぶのよ! 分かったような口き
かないで!」

物凄い剣幕だった。
好き好んで身体を売っているわけではないことがよく分かった。

「私たち兄妹がどんな思いで生きているのか、アンタに何が分かるのよ!」

幸恵の目から涙がこぼれた。

「ごめん。何も知らないのに、いらんこと言って」

俺は素直に頭を下げた。
止むに止まない理由があるのだろう。
恐らくヤクザがらみだろう。
そして俺は幸恵のことを物凄く傷付けてしまったのだろう。

「売春っていうと、昔、俺の仲間が、金欲しさに遊んでいたのを思い出したから。ホント、ごめんなさい」

「私のほうこそ感情的になったりしてごめんね。驚いたでしょ?」