哀しき野良犬

俺は事務所には寄らず、そのまま工場を出た。
社長は今日は出張で留守だ。
この時間だと既に新幹線の中だろう。
社長にはあらためて挨拶をしようと決めて、来た道を引き返した。


そう言えば俺は自転車をあのタバコの自販機の前に置いたままだった。
早く取りに行かないと撤去されてしまうかも知れない。

俺は気が向かなかったが、また繁華街に向かった。

夜は沢山の酔っ払いで溢れている通りだが、昼間は買い物目当ての主婦が圧倒的に多い。このように昼と夜とで顔を変える街は全国にいくつも存在する。
まるで世の中の裏と表を見るようだった。