哀しき野良犬

「ヤケだけは起こすなよな。他人を傷付けたら兄貴と同じだぞ。そうなったら彼女とガキ
が哀れじゃねえか」

何と答えるべきか考えてしまった。
彼女には昨夜別れを宣告された。
子供も近いうちに合法的に殺されることになる。

「元気出せよ、修平」

背中をバシンと叩かれた。
折れた肋骨にひびき、痛みで思わず咽た。

「大丈夫か?」

「・・・彼女とは・・・別れました」

一瞬、長坂先輩が固まった。
同情はされたくなかった。
笑い飛ばして欲しかった。

「でも大丈夫ですから」

「そっか・・・・・・」

俺は作り笑いを浮かべて更衣室に向かった。

すると事務所の窓ガラスが割れていることに気が付いた。

「あの、先輩・・・」

「社長はオマエには言うなって言ったんだけど」