哀しき野良犬

「朝になったらお粥作ってやるから、喰ってけよ」

「いや、でも俺、病人じゃないし」

「腹を殴られてんだぞ。普通のもの喰ったら吐いちゃうって」

「でも」

「それとも何? こんなみすぼらしい部屋に住んでる人間から施しなんか受けたくない?」

「え?」

「あ、ゴメン。なんか最近、僻みっぽくてさ」

やはりワケありなのだろう。

借金取りにでも追われているのかも知れない。

結局俺は夜が明けるまで此処で世話になり、お粥をご馳走になって部屋を出た。
部屋の外まで見送りに出て来た幸恵に携帯電話の番号を聞かれた。
治療費を支払えと言われたら支払うつもりだ。
だから素直に連絡先を教えた。