哀しき野良犬

その夜、
自分で喰うものも、母に供えるものも何もなくて、人が寝静まった時間になってからコンビニエンスストアに向かった。

母が自殺して、昼間はマスコミがますますヒートアップしていたらしいが、近隣からやかましいとの苦情が出て、深夜は取材を控えているようだった。
だが俺に対する一般人からの嫌がらせはなかなか控え目にならない。
さっき郵便受けを覗いたら、「死ね」 とか 「消えろ」 といった紙きれや、ビンに詰められたカエルも入っていた。
一体誰に　「死ね」 と言っているのだろうか。
俺にだろうか。
俺が何をしたと言うのだろう。

だが母は本当に死んでしまった。
何も悪いことなんかしていないのに。

世間はこれで満足なのだろうか。

近所のコンビニは店員の顔を知っているので、俺はわざわざ遠くにあるコンビニまで自転車で出掛けた。
なぜ俺がコソコソしなくてはならないのか納得できないが、世間は恐らく、俺が普通に買い物することを許さないのだろう。