王子に促されるままお城の中へ入って行く。

「「おかえりなさいませ坊ちゃん」」

入り口の扉を開くと、数十人のメイド達が入り口を挟んで左右に並び、王子に向かって頭を下げている。

私も慌ててお辞儀をする。

「ただいま」

王子は戸惑う私を他所に、メイド達にニッコリと挨拶をしてその間を通りその先にある螺旋階段を上って行く。

上ってすぐの所にある扉を開けると、天井にはシャンデリア、床には真っ白な絨毯、絨毯の上には高級そうなガラスのテーブルとソファが置かれていた。

「入って」

王子は中に入るよう促す。

私に続いて王子も後から入ると、入り口の扉を閉める。

中に入ると部屋の左右に扉があり、他にも部屋があることがわかった。

「あの時のこと覚えてる?」

中央にあるソファに座ると王子が口を開く。

「もちろん覚えてます。そのおかげで目標ができて受験勉強も頑張れました」

「そう」

私の回答を聞いて優しく微笑む王子。

「私のこと気にかけてくれてありがとうございました」

改めてお礼をする。

「お願いがあるんだけど聞いてくれる?」

「はい。何でも聞きます!」

「ありがとう」

王子のお願いを断る理由なんてない。

「僕の彼女のフリをして欲しいんだ」

「はい、喜んで!」

「、、、えっ!?」

王子の予想外すぎるお願いに思わず声が大きくなる。

「来週父の会社のパーティがあるんだけど、1人で行くと父の知り合いから女性を紹介されるから困ってて。彼女として一緒に行って欲しいんだけどダメかな?」

王子がまっすぐに私を見る。

「そういうことなら」

「ありがとう。助かるよ」

キューン

本日最大の王子スマイルにやられる私。

コンコンッ

誰かがドアを叩く。

「どうぞ」

王子が許可を出す。

「ご夕食の準備が整いました」

ドア越しに女性が答える。

「ありがとう。すぐに行くよ」

王子もドア越しに返事をする。

「行こうか」

王子がドアを開け出るように促す。

「あっ。私寮に戻らないと」

夕食の時間までに寮に戻らなければ、レポート30枚という恐ろしい罰があると入寮時に説明されたことを思い出した。

「大丈夫。連絡してあるよ」

王子の言葉にホッとする。

さすが理事長のご子息。

王子について行くと、ドラマでしか見たことがない長いテーブルのある部屋へ案内された。

「どうぞ」

黒いスーツの男性が椅子を引いてくれる。

慣れない私はぎこちなく、長いテーブルの端にある椅子に座る。

「真鯛のカルパッチョでございます」

私と王子が座ると、コック帽を被った男性が料理を運んでくれる。

フォークとナイフの使い方がわからず、10mほど先に座る王子の方を見る。

(綺麗な食べ方、、、)

王子が料理を口に運ぶ姿に見とれていると、顔を上げた王子と目が合う。

「食べて」

王子に促されて料理を食べる。

「美味しい」

あまりの美味しさに思わず声が漏れる私に王子は優しく微笑む。