「はい、これ」


そう言いながら、俺はエミリーに座席の券を渡す。



「ありがとうございます! すみません…奢ってもらって」


「いえいえ~」



今、俺とエミリーはデートの真っ最中!


先に言っておくが、エミリーに想いが通じた訳ではない。


俺なりに気持ちを伝えたつもりだったんだけど…


鈍感な彼女には伝わらなかったみたい。


今日は、言わずと知れたホワイトデー。


だからチョコのお礼に、少し前から見たいと言っていた映画に誘ったんだ。


何でもお気に入りの作家の小説が映画化された物だとか…



「楽しみー! 早く始まらないかなぁ」



喜んでいるエミリーを見ていると、デートに誘ってよかったと心から思った。