そりゃないよ、エミリー。


俺はふっと気が抜けて、その場にしゃがみ込んだ。



「どうかしたんですか!? 片瀬さん?」



エミリーが心配そうな声で俺に話しかけるが、今は答える気になれない。


いくら何でも、誰彼構わずキスなんてするはずが…


いや、そりゃ少し前はしてたけど!


今は真剣な訳で…



「ハァ」



一つため息を洩らして顔を上げると、キョトンとした顔付きのエミリーがそこにいた。


どうやら俺の気持ちに気付いてもらえるのは、まだまだ先の話になりそうだ。


虚しさがさらに大きくなるような少し強めの北風が、屋上に吹きはじめた。