「残念でした」




“けち”なんて、どの口が言うんだか。
この間、出かけた時に私にパフェの一つも奢ってくれなかったのはあんたの方よ、と心の中でボソッと呟く。


まあ、女に奢らせようとする私も私だ。





「望叶、」



「何、すごい顔してるけど」



ニヤニヤしていたと思ったら、今度は化粧をする手を止めて何とも言えない表情をする彼女に、


その顔ブスだからさっさと元に戻しなよ、なんて酷い言葉を吐きそうになるのをグッと堪える。



「……後ろ」



恐る恐る、というような様子で与えられたヒントに迷うことなく振り返ればそこに立っていたのは、


「用があるんだけどいい?」


あからさまな不機嫌顔を浮かべるギャル三人組。



これは所謂、呼び出しというもので動機が分からないほど馬鹿じゃないけど、そんなことより心配なのは今の会話を聞かれていたか否か。

クラスメイトの前では声を変えているんだよ、私は。
朝のうだうだの中なら聞こえないだろうと思っていつものトーンで喋ってるから安心できてるのに。



……聞かれてたかもね。
私の可愛くない声とか、台詞とか。




「へ……?わ、分かりました……」


我ながら天使すぎる声を出しても、ギャルたちが「は?」みたいな顔をしないのはさっきの地声を聞かれてないからだろう。


一掴みの安心を抱えて、だるさを感じながら椅子から立ち上がる。