「律、今度の土曜日休みだろ?一緒に出掛けない?」
その日の夕方、職場の前で偶然会った康介が突然言った。
頬を気恥ずかしそうに薄っすら赤く染めて。
私はずっと前から康介の気持ちにも気付いていた。
あれから男には自分から近付かないようにしていた。
自然に逃げるのが得意になった。
「私、この前のあの人と付き合うことにしたから」
今井律に抱かれたら良い特典ばかり。
だって今井律のマンションはあのアパートみたいに隙間風なんて無いし、効果抜群な拒絶が使える。
康介が黙りこくるとジーンズのポケットに入れていた携帯から振動を感じた。
確認すると今井律。
『夜、かなり遅くなる』



