「律の作業、俺が代わりにやってやったんだぞ?」

予定があると言おうとしたら拒否出来ない言葉が出してきた。

バイトは一応緩いがサボらせないために一日のノルマがある。
欠勤したら早く作業を終えた人が代わりにやることになるのだ。

「分かった。暇潰しに付き合う」

私は笑顔を張り付けて返した。

多分付き合うにしろ、一時間も無いし。


カフェに入ると、窓側のカウンター席に並んで座った。
隣の距離は近いけれど、顔を見て話さなくても良いからこの席を選んだ。
私は温かいコーヒーカップを両手で包み、前の景色を眺めながら康介の会話を聞く。


「律はきっとバイト先の誰かのインフル拾ったよ。今インフルブームだから」

「ほんとに?康介は大丈夫?」

「俺は去年の教訓を生かして予防接種しといたもん」

「マジか。私も来年は絶対射とう」