髪から落ちる水滴が首をつたい吸い付いていく。
それがやけに彼の色気を引き立たせていて、思わず目のやり場に困り視線をそらした。



「あの、遅くなってごめんなさい…つい仕事に夢中になってたら時間忘れてて」



「それなら仕方ないな、仕事に熱心な社員を俺が怒るわけにいかないし」




咲夜は予想とは違い全く怒る気配はなくて、それどころか優しげに少し微笑む。



「ごめんなさい、明日はちゃんと早く帰るから」


「あぁ、どうしても遅れる時は早めに連絡しろ」


「うん」


「それより腹減った、食べるぞ」



持っていたバスタオルをソファーへと放り投げた咲夜は、冷蔵庫からビールを二缶持ってくるとそのままダイニングへと座る。


私もそれに合わせるようにして咲夜の前に腰をかけると、先程脱いだジャケットを椅子にかけた。



「ビール飲むか?」



「あ、うん。飲む」



咲夜は持って来たうちの一つのビールを手に取ると、固そうな缶をいとも簡単に開けて私に手渡す。



「ありがとう」


そんな紳士的な事をさらりとやってしまう所を見ると、きっとそこらの男性達は神様ってなんて不平等なんだろうと思ってるに違いない。