急いで走ったからか、マンションまではあっという間に着いてまだ見慣れないだだっ広いエントランスへと足を踏み入れる。
エレベーターから降り、玄関ドアの前で立ち止まると走って乱れた呼吸を整えた。
なるべくゆっくりと、ひっそりと扉を開ける。
玄関には咲夜のピカピカに輝いた高級そうな革靴が置かれていて、彼が帰って来ているんだという事が伺える。
やばい…私の方が遅かったか……
リビングへと繋がる廊下を歩き扉に手を触れれば、それを握りしめてゆっくりと開いた。
だけれど、リビングに入り辺りを見渡すけれどそこに咲夜の姿はない。
「あれ…いない」
てっきり怒りモードで待っていると思った咲夜はそこにはいなくて…だけれどダイニングテーブルには昨日同様沢山の料理達が並べられている。
お肉、サラダ、スープ、デザート
うわぁ。どれも美味しそう。残業後の空腹にはたまらない。
ぐぅっとなりそうなお腹を押さえながら着ていたジャケットを脱いでいると
「帰って来たのか、遅かったな」
後ろから聞こえてきたのは、少し低めなまだ聞きなれないそんな声。
そちらへ振り返ると、お風呂上がりなのだろうか。そこにはラフな格好に着替えて濡れた頭をバスタオルで拭いている咲夜がいた。



