「あなたの瞳の色にそっくりだったから」

言った自分の顔が赤くなるのがわかる。そしてそれを聞いたグイード殿下の顔はもっと赤くなった。熱に触発されて赤い瞳が潤んだように見える。

「お前は……本当に……」

王子殿下は呻いて、珍しく本気で参った様子で顔を手で撫でる。何度か口を開閉しているものの言葉が出てこないようだ。意味も無く帽子を何度も被り直して、こちらに手を伸ばした。

「貸せ、つけてやる」

「あ……はい」

渡した指と受け取った指がほんの少し触れる。掠めただけ、それだけで過剰なくらいに体が跳ねる。それは相手も同じで、しばらくの間2人は見つめ合う互いの瞳に縛り付けられて動けなくなっていた。

のろのろとした動きでグイード殿下の腕が上がる。普段の調子では想像もできないようなぎこちない動きで私の髪を払う。

長い指が首に触れる。腕が回される。すぐ目の前には若草色のシャツがある。ほとんど抱き締められるような格好で、私は留め具が音を立てるのを聞いていた。

「終わったぞ」

「終わりました、ね」

頷く。でも離れられなかった。いっそ突き放してくれればいいと思った。この人はそんなことをしないだろうとわかっていても。

頭を何か躊躇うような微かなため息が撫でる。かと思うと、ぐいと後頭部に手を当てて引き寄せられた。

どくん、どくん、どくん、と伝わってくる大きな音が最初は何かわからなかった。まさかこのふてぶてしい王子様が、私みたいに心臓を跳ねさせているとは思わなかったから。

私は耳を彼の胸にそっと寄せた。するとその音はもっと早く大きくなる。それを聞いた私の心臓も同調して強く震える。

「抱きしめても、いいか?」

「……なんで聞くんですか」

「……さあ、なんとなくだ」

聞いたくせに、答えを言う前に抱きしめられた。強いけれど、壊れ物に触れるような優しい手が背中に触れる。どうやったらこんな風に触れられるんだろう、と思う。