「やっぱり……お姉ちゃん、どこか悪いの?」

全く悪気の無い顔で問われるので、ガンッとショックを受ける。このままでは邪気無く頭がおかしい人認定されそうである。

「ここはシェバルコ王国で、ユリーナはユリーナだよ。ユリーナがね、薪拾いに来たらお姉ちゃんがここで寝転がってたから、どうしたのかなって心配になったの」

「しぇ……シェバ?王国?」

聞き慣れない国名を反芻できない。そんな国あったかな。いや、地理の授業でも聞いたことがない……と思う。

「シェバルコ、だよお姉ちゃん」

全く会話が成り立たない私にユリーナは戸惑っている様子だ。

「どこか遠くから来たの……?」

「え、ええ……と、どうなんだろう」

まずその『シェバルコ王国』とやらがよくわからないし、日本からどのくらい距離があるのかもわからない。けれどユリーナの姿を見るにヨーロッパの方だろうと見当をつけて頷いた。

「そっかあ……お姉ちゃん、ひとりぼっちで来たの?」

「そうなる……のかな」

ひとりぼっち、それを聞いた時ふと家族の姿が脳裏を掠めた。

あの後、どうなったのだろう。家族は悲しんだだろうか、娘を少しでも誇りにおもっただろうか。
なぜ私は怪我の一つもなく、ひとりでここにいるのだろう。

「まいご?」

迷子……なのかもしれない。けれどこれ以上通りがかっただけの少女に迷惑をかける訳にはいかないと、私はユリーナに笑った。

「ううん、大丈夫。そのうち迎えが来る……かもしれないから」