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グイード殿下の自室に通された。一応ソファに座ったものの、ふわふわ過ぎて座り心地が悪い。シャルキさんは王子の後ろに腕を後ろに組んで立っている。

エスメラルダ殿下の事を尋ねようかと思ったが、上手く口が動かない。

うーんうーんと私が唸っていると、侍女がやって来て私とグイード殿下の前にカップを一組づつ置いた。それを見て私はぎょっとした。ティーカップもソーサーも全て金だったからだ。

手に取って持ち上げてみる。重いのでめっきではなさそうだ。王子様って凄い……これ、いくらするんだろう。

まあ、お茶を飲めば少し気が落ち着くかもしれない。私はティーカップを口につけた。

「駄目だ!」

「!?」

正面に座っていたグイード殿下が私の手からカップを弾き飛ばした。がしゃん、とけたたましい音を立てて少し離れた所に落ちると、紅茶のような透き通った茶色の液体が床を濡らしていく。

「なに、を……」

私の声を無視して王子は大声で侍女を呼ぶ。

「なぜ金の食器を出した!」

「殿下はいつも金の食器を出せと……」

侍女は戸惑った様子で目を泳がせながら、震える声で答える。

「俺はいい。こいつには銀の食器を出せ。わかったな?」

「は、はい!かしこまりました!」

すぐに銀のカップに取り替えられる。王子の様子を伺いながら口をつけると、今度は咎められなかった。

何であんなことをしたんだろう。私みたいな人が金の食器を使うのは気に食わなかった?王族しか使うなみたいな決まりがあるとか?でもそれなら侍女も私に銀の食器を出すような気がする。

説明してくれる気は無さそうだ。知らん振りをしてお茶を啜っている。弁解でも何でもすればいいのに。

他人に何と思われようが気に止めていない。どうでもいい。そんな投げやりな感じがする。