「梨華が手に入るなら、仕事は捨てても良い。」

耀一は「そこまで言うならと」話し出した。

「彼女の病名は知らなくても、彼女が通院していたことを、お前は知っていた?
そして、彼女のしてきた仕事も、勿論知ってる筈だ。
なのに、なぜお前は彼女をアメリカへ連れて行きたいと親御さんへ頭下げなかった!?
なぜ、彼女の口から本社への移籍を伝えさせようとした!?」

「祐司…何が言いたい?」

「いくら、お前が孤児でも、親が子を心配する気持ちや、子が親を心配させたくないと思う気持ちくらい分かると思うが!?
国内じゃない!
海を渡って、よその国へ行くんだぞ!?」

「………」

「浩司? 俺はお前に幸せになってもらいたい。
同じ様に彼女にも幸せになってもらいたい」

「今のお前には彼女は幸せに出来ない!
よく考えろ!?」

なにも言い返せなかった…
病院に通っていることを知りながら、梨華がなにも話さないのなら、俺は聞かないのが優しさだと思っていた。

だが、間違っていた。
もしかして…俺が梨華に話せなくしていたのかも知れない。

梨華…
梨華…すまない…

「すまなかった…」

「俺に謝っても仕方ないだろ?」

「そうだな…?梨華に謝らせてくれ…頼む!
全てを失っても梨華だけは手放したくない!」

「分かった…」

祐司は梨華の居所も、梨華の今の状態も話してくれた。
まさか梨華がそんなことになっていようとは…
自分が辛く悲しいときに、俺の事を考え、別れを選んだなんて…

「耀一…話してくれてありがとう…」