ボブの家を出ると日本に居る耀一に電話した。

「耀一、もう一度聞く、梨華は本当に自分の意思で退職したのか?」

「ああ、彼女の退職はお前が帰る1ヶ月前から決まっていたからな?」

「どういう事だ!?
俺はなにも聞いてないぞ!?」

「居なくなる(本社へ帰る)人間に、関係無いと思ってな?」

「はぁ関係無いだと!?
俺と彼女の事はお前も知っていただろ!?
こっち(本社)での梨華の生活が落ち着いたら結婚するつもりだった!
お前にもそう話していただろ!?」

俺が帰る1ヶ月前からってどういう事だ!?その頃には彼女もこっち(本社)へ移る事は承諾していた。

「でも彼女は、望んでいなかった!」

「…何が言いたい?」

「彼女が何も言わず姿を消したと言うことは、そう言うことなんじゃないのか?
彼女の事はもう忘れてやれ?それが彼女のぁ…」

「彼女のなんだ!?…おまえ何を隠してる!?
クッソ!!
電話じゃ、らちあかねぇ!今からそっち(日本)へ行く!」

電話を切るとそのまま空港へと向かおうとした。だが、トラブルが起きたと連絡が入り、動きがとれなくなった。

D諸島でクーデターが起きたと連絡が入ったのだ。クーデター事態は直ぐに収まったが、輸出の許可がなかなかおりず、荷物が足止めを食らっていたのだ。窓口だった第三王子が拘束され、なんとか手をつくしながら、第三王子が解放されるのを待っていた。

結局日本へ向かったのは、日本へ向かうと言ってから一ヶ月後だった。

「ずいぶん遅かったな?」

「っ…」

「お前が大変だったのは知ってるよ?
こっちにも連絡入ってるし、ニュースでもやってたからな?
で、上手くいったのか?ってお前がここにいるって事は上手く行ったよな?」

「梨華は!?
梨華をどこに隠してる!?」

「人聞き悪いな?
俺は彼女を隠したりしてないよ?
あくまで彼女の意思だ!」

「ここに来る前に彼女の実家に寄ったが、『なにも教えることは出来ない。』と言われてなにも教えてくれなかった。
後はお前に聞くしか無いんだ! 教えてくれ!
まさかお前が梨華を隠してるのか!?」

「さぁどうだろうな?
彼女は誰の目からみても良い女だし?」

「おまえ!?
梨華になにした!?」

耀一の胸ぐらを掴むと、
耀一は「殴りたきゃ殴れ!」と言った。
殴ったところで、耀一がすんなり梨華の居場所を吐く奴じゃない事は、俺が一番よく知ってる。だから、信用もしていた。
ならば…

「頼む教えてくれ!」

今まで一度もしたことのない土下座をした。

「彼女に何も話さないで欲しいと頼まれたから、話せない。」

断られても、なお頭を床へ押し付ける程の土下座をした。

これでもダメか…

「だが、お前に仕事を辞める覚悟があるなら、教えてやっても良いぞ?」

仕事を辞める…覚悟?
俺が?
仕事にだけ生きてきた俺に…
仕事を捨てられるのか…

「まぁ無理だよな?
仕事人間のお前には?」

「………」

「だが、彼女の側に居たいなら、仕事人間は辞めろ!」