マンションを引き払った後、実家に戻り、家の手伝いをしていた。体調の変化もなく、規則正しい生活を送っていれば、このまま平穏な生活を送れるのだと思っていた。

そんなある日、目を覚ませば、そこは病院の救急処置室だった。
側にいた兄は「気がついたか?」と安堵の顔をし、母は涙を流し心配していた。

また、痙攣起こしたのだと直ぐに分かった。母達と一言二言、話をすると、自分の身体に違和感を覚えた。

あっ痙攣だ!
全身が強張る。
恐い…
助けて…

「先生!佐伯が…」看護師の慌てる声がした。

次に気が付いたときには、集中治療室のベットの上だった。

夜、お義姉がトイレに起きたときに、私の部屋から呻き声が聞こえ戸を開けると私が痙攣起こしていたらしく、お義姉は慌てて私の口に、自分の指を突込み、兄を大声で呼んだと言う。

「お義姉さん…ありがとう」

「ううん。良かったわ!無事で?」

微笑む姉の右手の指は包帯が巻かれていた。

「その指…」

「気にするな? 指は大したこと無い。
直ぐに動くようになるってさ!
それより、梨華の歯が丈夫なことがよく分かったよ?
今度から胡桃を割るときは梨華に頼むわ!」と笑う兄。

「ごめんね?」

「本当に大したこと無いから、気にしないで?」とお義姉さんも言ってくれる。

お義姉さんには痛い思いさせたけど
もし、お義姉が気がついてくれなかったら…
私は…

考えるだけで恐い。

暫くして一般病棟へ移り、手術の日を待つことになった。