ふと杉本さんと目が合った。

”今紹介する?”
”いえ、いいです。やめておきます”

二人で目で会話した。
そうだろうね。こんな全身からトゲを生やしたような状態の社長に近付きたいなんて思うヒトはいないだろう。

慣れてる私でさえできればごめんこうむりたい。
仕方なく急いでいくつか引き継ぎを済ませてバッグを持った。
待たせるとまたネチネチとうるさいから。

その暴君は下北さんとまだやりとりをしている。
なんだ、そっちだってまだ終わってないじゃん。私だけ急がせちゃって。私だってまだやらなきゃならないことだってあったのに。
ふんっと嫌な顔になる。

すると、急に社長が振り向いて私を見てかすかに笑った。
え、何?

「後は頼んだ」
下北さんにそう言うとまた仏頂面に戻っている。

もー、何だっていうんだ。

つかつかと私に近づき「行くぞ」と肩に手をまわしてきて私はオフィスから連れ出された。どれだけ強引なんですか。