「親父が駐車場付きのアパートを借りてくれている。家具も家電も準備されているから着替えとか身の回りのものだけ持っていけばいい。急で悪いが頼りにしている。頼んだぞ、灯里」

大和さんが私の頭にポンと手を置いた。

「任せて」
私は微笑み返した。
道は決まっている。信頼に応えられるように頑張るしかない。

お昼時になってオフィスの中がざわざわとしはじめる。徐々に外に出ていた社員たちが戻り始めてきていた。
大和さんは私の頭から手を外し、スマホを取り出すと下北さんに電話をかけ始めた。

「ああ、来週うちの灯里をそっちにやるから。・・・だろ?・・・ああ、そうなんだ。それで展示場の・・・」

ちょっと、いまこの人、来週そっちにやるって言ったけど。来月って言ったじゃん。
来月じゃないの?何、来週って。