「コーヒーお待たせいたしました」

わざとらしくよそいきの声を出して、広げられた書類の邪魔にならない場所にコーヒーを置いても社長は私を見ようとしない。
相当機嫌が悪いらしい。

まあ、慣れてるけど。

社長の隣のソファーにどんっと座ってご機嫌の悪い原因になったであろう書類をのぞき込んだ。

「あ」

思わず漏れた私の声に社長が振り向く。
視線を感じたのは一瞬ですぐに気配は消えてなくなった。

「で、これ期間はどのくらいなんだ?採算とれるのか?」
社長は下北さんの手もとのパソコンに目をやった。

「ああ、計算上は問題ないはずだ。期間に関してはこちらがどれだけ人手を回せるかって辺りの問題になるな」

「そうか」

変わらず私を無視している社長。下北さんと進められていく会話。