いつだって櫂は自分の思い通りに事を進める。

白馬の王子さまにも裏の顔がある。あの頃それに気付かなかったのは若さ故の経験不足か。

出会ったのは私が大学生の時。
私は都心の有名ホテルの近くにあるティールームでバイトをしていて、そこを頻繁に商談で利用していた櫂とは客とウエイトレスという立場で出会った。

シアトル系カフェや可愛いパンケーキなど出すようなお店ではなく、ゆったりとお茶を楽しんだり、櫂のように商談をするような落ち着いた雰囲気のお店だった。

櫂の見た目の良さに一緒に働く周りのバイトの女の子たちは接客する度にはしゃいでいたけれど、私は反対に距離をとった。

触らぬ神に祟りなし
イケメンは観賞用で見ているだけに限る。

そんな私に櫂は逆に興味を持ったと後日言っていた。

じわじわと距離を詰められて気が付けばお付き合いをする仲になっていた。
出会った時に櫂は26才私は22才。
大人の男性に熱心に口説かれ有頂天になってしまった私。

そうして大学4年から就職して1年ほど、トータル2年間の付き合いだった。