「イースト設計って言ったらあのイーストだよね。すごいとこのヤツと知り合いなんだな、灯里さん」
腕組みをして頷く下北さんに怪訝な表情をすると、驚いた顔をされた。

「もしかして、イースト設計ってどんな会社か知らないの?」

「ハイ。全然」
素直に返答すると下北さんは頭を抱えてうつむいてしまった。

「あのローマの美術館やジュネーヴの首都の駅舎の設計を手掛けて国際コンクールで賞を何度も獲ってる東山正幸の事務所だよ」

ひがしやま まさゆき?
何となく聞いたことがあるような。

「おいおい、知らないのか。まあもともと建設畑の人間じゃないから仕方ないかもしれないけど。あ、これなら知ってるはずだ。蓼科の元総理の別荘を建て替えて今は美術館になっているスギモトミュージアム」

あ!

「知ってます!」

あの自然と調和したままにガラス窓を多用した建物が近寄りがたく荘厳な雰囲気を醸し出していて、ここが特別な空間に来たと認識させてくれる素敵な美術館。
そうなんだ、あそこを設計した事務所ってことか。