募集した途端に先代社長の森家のお父さんが知人の姪御さんを連れてきた。土下座して頼まれたというんだけど。
私を含めて縁故採用が多いこの会社、それ自体は珍しいことじゃない。
でもね、----この子はかなりのんびり屋さんで他の人と時間の進み方が違うらしい。

「あー、鈴木真美ちゃんね。うーん、癒し系っていうか、のんびり?いい子ではあるんだけどね。まぁーうん、あれよ。独り立ちにはもう少し時間がかかるかな。でも拓朗君が何かと気にかけてくれてることだし、なんとか大丈夫だと思う。それに村上さんも退職したわけじゃないし、来週からは新しく派遣さんも来てくれることになってるし」

私がまだ長野に戻れない理由は真美ちゃんだ。
私は真美ちゃんが独り立ちするか来週から来る派遣社員さんが独り立ちするかを見届けてから長野に戻ることになっている。

でも、経理をお願いするために引き抜いた光さんの実弟の拓朗君が本当に仕事の出来る男で私も日々教えを乞うているのだから、私がここに居ることはマイナスなわけでもない。
ただ、そろそろ本当に大和さんの近くにいたいという想いが強くて辛いのだ。



近くの家具屋でマットレスを購入すると、平日ですいているからと即配送してくれることになり、私たちも家具屋からとんぼ返りをしてマットレスが届くのを部屋で待つことになった。