冷たいキスなら許さない

首都高のジャンクション周辺だけは流れが悪く渋滞していたけれどそこを抜けるとスムーズに空港の駐車場に到着することができた。

大和社長からは定刻通りに出発と連絡を受けている。時間通りなら到着までには少し余裕がある。早目に着いた私は到着ゲート近くのカフェでひと息つくことにした。

ほうじ茶ラテを口に運ぶと香ばしい香りとまろやかな甘みにじわじわと温かさが固くなった身体に伝わっていくのがわかる。

車の中では帰ってくる社長に会えるとワクワクしていたのに、ここに来て私は緊張しはじめていたのだ。
ひと口、もうひと口とゆっくりと飲みこんでやっとお腹の中が温まってきた。でも、指先は冷えたまま。

会ったら何て言えばいい?

まずは”お帰りなさい”でしょ、それで、その後は?

さみしかった
とか?うーん、なんか違う気がする。

待ってました、か?

宿題片づけました、とか?
教師と生徒かっつーの。

好きです
これはナイ。いきなりこれはないし、無理。ハードル高すぎ。

うんうんと考えていたらどうやら無事に飛行機が着いたようで、同じような時間に到着した乗客たちと出迎えた人たちで到着ゲートの周りが賑やかになる。

社長には迎えに行くことを伝えてあるし、周囲から頭一つ飛び出している大柄な社長が出て来たら少し離れている場所でも見つけることができるだろう、そう思ってゲート近くの人ごみから一歩引いた場所でゲートから出てくる人の波を見つめた。