イースト設計の社内に櫂の情報を漏らしている西倉恭香の協力者がいるのはわかった。

「それで?」
先を促すと、諦めたように話し始めた。

「あなたのことはパーティーで出会うまで忘れていた。
でも、同じパーティに出ているってことは偶然じゃないって思ったわ。それで聞いたの。あなたのことを知っているかって。
そうしたら、それは最近よく会ってるらしい厚木にいる櫂のごく親しい知り合いじゃないかって言ったのよ。
その上、二人は付き合ってるのかもしれないとも言われて」

西倉恭香はぐすぐスト鼻をすすりながらも話し続ける。

「一昨日、櫂が出先から戻ってきたときに珍しく上機嫌だったって。どうしたのか聞いても教えてくれなかったけど、その様子でたぶんあれは女性関係でいいことがあったなって、その人が言ってたの。
そして、今日櫂が珍しく残業しないでいそいそと帰り支度をしていて、他の同僚が『桐山、デートか?』ってからかっても否定はしないし、『ミッドタウンのイルミネーションがおすすめだぞ』って言われても『残念ながら代々木だから』って言ってたって聞いて。
ーーここにあなたが来るかどうかは賭けだったんだけどーー」

たったそれだけの情報で会う相手が私だと思ってここに居たというんだろうか。
だとしたら、恐るべき推理力と行動力。