「は?そうなのか?」
社長は私の声に少し驚いた顔をした後、嬉しそうな笑みを浮かべた。

「わかったからあんまり怒んな」

つまんでいた私の頬を今度はやわやわと揉みはじめた。
その手は優しいけれど、私にはホントに何が真実で何が嘘なのかわからない。

「でもな、今日からカナダに行くのは本当なんだ。
金山産業の頼みであっちの木材探してたら、昨日の夜中にいいのが見つかったって連絡入って。現地のメーカーに取られないように早く見に行く必要がある。
今夜の飛行機のチケットがとれたからちょっと行ってくるな」

「社長、私混乱してーーえ?カナダは本当って」

ちょっと行ってくるって・・・カナダですけど?

「灯里はその間ゆっくり俺の事考えればいい」

何がどうなってどうしていいのかどうすればいいのか混乱の中にいた。

「そう、今夜遅くの便でバンクーバーに行ってくる。帰りは5日後の予定だから」

そんなの聞いてない。今は長野と厚木で離れているけど5日間も留守になるのに秘書に秘密ってやっぱりひどい。
それに私と社長の関係については何の結論も出ていない。