「桐山さん、こちらの方とお知り合いですか?」
小野寺と名乗ったメーカーの女性が驚いた表情で私と彼を見比べるようにし、うちの新人さんたちも私たちの様子をうかがっている。

「ええ。私の以前勤務していた職場の関係の知人です。桐山さん、ご無沙汰いたしております」
ことさら丁寧に頭を下げる。
彼が口を開く前に私が答えてやった。

まさか「自分が捨てた元カノ」だなんて言わないだろけれど、周囲に余分な詮索はされたくない。

「あ、ええ。久しぶり」
私のビジネス対応に戸惑っているのか彼の態度はぎこちなく見える。

負けるもんか。動揺して崩れたら負け。
表情に身体に硬い鎧をまとうイメージをした。