冷たいキスなら許さない

「灯里、ごめん。悪かったと思ってるから我慢しておとなしくして。まず話を聞け」
ぎゅっと頭と背中を両腕で強く包みこまれて、慌ててもがいてみるけど動こうにも動けない。
温かい体温と社長の香りを感じてさらに焦る。

「長年想い続けた好きな女がいるのに他の女にキスするなんて最低」
押さえつけられた胸の中で必死にもがきながら声を出す。私が知っている社長はこんなことする人じゃない。

「確かに無理やりしたのは最低だった」
ジタバタと暴れる私を腕に抱きしめて耳元で囁く。ホントに最低。
キスだけじゃなくてこうやって抱きしめるのもやめて欲しい。

「おい、こら。いい加減暴れんな。また口塞ぐぞ」

え、それはダメ。

その一言で動きを止めた。
鬼畜か。

それまで片膝立ちで私を受け止めていた社長が動きを止めてすっかりおとなしくなった私を抱えなおす。
よっと勢いつけて抱えあげられ、下ろされた先はなんと社長の胡坐をかいた膝の上だった。
ひっと息をのむ。

なんで、床に胡坐。
どうしてその胡坐の上に私。