冷たいキスなら許さない

なにこれ
社長の唇から熱い吐息が流れ込んでくる。
次第に身体の力が抜けていき、重ねられた唇の温かさに身を任せたくなってしまう。

おとなしくなったのを確認したからか私の目隠しをしていた右手が外れていった。
視界が戻ってきたはずだけど目を開けることができない。どんどんキスが深くなっていっているから。

目の奥がチカチカとしはじめ息苦しさを感じる。
どのくらいキスしていたのかはわからないけれど、身体が離された時には膝から力が抜けてしまってぺたりと床に座り込む。
息苦しくてうまく頭が回らない。

拒否はしなかった。できなかったわけじゃない、しなかった。
心の奥で私は男性としての社長を求めていたんだ。
拒絶され、突き放されたような夜を過ごして、その間考えていたのは大和社長と自分の関係。

「灯里ーー大丈夫か?」
顔をのぞき込んでくる暴君に”大丈夫なはずがない”そう言ってやりたかったけれど、ぺたりと床に座り込んだまま声も出せずはあはあと肩で息をする。