冷たいキスなら許さない

答えられずに黙っていると、
「大和のせいってことでいいのかな?」
少し楽し気な声になっている。

その様子にムッとする。
「ーーどうしてそんなこと聞くんですか」
ずずっと鼻をすすりながら涙を拭った。下北さんとは上司と部下という関係だけど、プライベートは別問題。

「だって大和にカナダに行くって聞かされてなくてショックだったんだよね?」

「そんなこと、下北さんに関係ありません」
頭にきてつい大声を出してしまった。

これは八つ当たりってわかってるけど、止められない。
だって、だって、ひどいじゃない。
社長が私に連絡してこないって知っててそんな言い方して。

ぶわっと涙があふれる。
我慢していたのに。我慢しきれなくなったのは下北さんのせいで感情を爆発させたからだ。

「うわあ、ごめん。そんなつもりじゃ。ーごめんよ、灯里さん。参ったな、どうすりゃいいんだ」
おろおろとうろたえる下北さんと涙が止まらない私。