4年前の今頃。失恋し絶望と喪失感に襲われて苦しんで毎日泣いていた自分を立て直そうと大和さんの会社に無理やり入れてもらった。
ひいじいちゃんの法事に出てエリちゃんに会えてよかった。

失恋の痛みは消えなくて、もう恋だの愛だのなんて自分にはいらないものだって思っているけど、今の仕事は楽しい。社長が変わり者ってことも刺激があってなかなかだ。

ふと窓の外を見ると晴れていたはずの空に低い雲がかかり辺りは暗くなってきている。
今年は秋になっても天気が安定しない。

ざあっとひと雨きそう。
こんな調子だと今日の来場者はより少ないだろう。
接客の実践研修じゃなくて講義をしてゆっくり新人教育をする時間に当てようか。

パソコンを開いて講義の準備にとりかかろうとしたところに来客を知らせるセンサーが鳴った。

素早く玄関に向かい、挨拶をしようとすると入ってきた紺のスーツ姿の女性に先制された。

「ごめんなさい、来客者ではなくて同業者のものです。この度B区画8番に展示をすることになりましたのでご挨拶に伺いました。ーーあの、責任者の方はいらっしゃいますか?」

このスーツの女性、トシは30半ばってとこだろうか。素早く私を上から下まで確認したうえで私はここの責任者ではないと判断したのだろう。