進さんが言うより早くエリちゃんの興奮した声が聞こえてきた。
「灯里ちゃん、やっとなの?やっとなのねー、おめでとう!」

「エリちゃんまでー。聞いて、お願い。本当に違うの。困ってんの!」
電話の向こうにいるまた従姉妹にこの状況を説明した。もちろんキスしたことは除いて。


「--ふうん。灯里ちゃんがあのころの夢を見てうなされたところを宥めてくれただけ・・・って。んー、まぁ、あのお母さんたちに通用する言い訳としては苦しいね」
「言い訳じゃなくて事実!」

「でもさ、灯里ちゃんの言う通り、これをきっかけにお義兄さんがその、何だっけ?まあいいや。その好きなオンナにプロポーズしたとして、それが成功したら灯里ちゃんはどうするの。それでもいいの?」

「ーーーいいも悪いもないでしょ。社長が幸せになるんだから。偽恋人は笑顔で身を引くしかないじゃん」
自分で言っていてなぜか胸の奥が痛い。
下北さんと話していた時にはチクッとしただけだったのが今はじくじくに変わっている。