酔って脱いだらしい社長の背広を回収して、忘れ物がないか見回していると
「灯里ぃ」と酔っぱらいの声がする。

「はいはい、何ですか?」
振り返って社長の首から緩んで垂れ下がったネクタイをシュッと引き抜いてやる。

「お開き?」
「そうですよ。もう、どれだけ飲んだんですか。帰りますよ。しっかり歩いて下さいね」

すると目がとろんとしているくせに正座にと座り直して「本日は本当にありがとうございました」と突っ伏して眠りこけている東山氏に丁寧にあいさつをしている。
こっちもかなり酔っぱらいだ。

下北さんも酔っているけれど、東山氏や大和社長ほどではなくて私の手は必要ない。
クスクスと奥さまが笑って「早くお帰りなさいね」と促してくれた。